相続第10回目「改正相続法の概要ー配偶者の居住権を保護するための方策」

弁護士の若林です。

今回は、改正相続法のうち、①配偶者の居住権を保護するための方策について見ていきます。

 現代は「人生100年時代」という言葉が象徴する様に平均寿命が伸びており、従来に比べると相続開始時の配偶者相続人年齢が高齢化しています。そして、高齢の方にとって居住環境の変更は特に大きな負担となるため、相続開始後も住み慣れた住居での生活を希望される方が多いです。
 被相続人の財産に配偶者が居住している不動産が含まれている場合、上記希望を叶えるためには、不動産を配偶者が相続する(所有権を取得する)、又は、不動産を相続する相続人と配偶者間で賃貸借契約を締結する内容で遺産分割協議をまとめられれば良いのですが、残念ながら調整がつかないこともあります。
また、不動産を配偶者が取得することになった場合でも、不動産の評価額が高額で配偶者がそれ以外の相続財産(例えば預貯金や現金等)を相続することができず、今後の生活資金に不安が生じることもあります。
このような事態を踏まえ、法改正の結果、以下の内容の条文が設けられました。

民法第1028条
 被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(居住建物)の全部について無償で使用及び収益をする権利(配偶者居住権)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
 1 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
 2 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。
(以下略)

 改正相続法では、配偶者に居住建物の無償使用権限を認める配偶者居住権を新設し、配偶者が居住建物に住み続けることができるようにしました。しかも、配偶者居住権の取得額は居住建物の所有権の取得額よりも低廉であるため、配偶者居住権を取得した上で更にその他の相続財産(現金や預貯金等)を取得しやすくなります。
 さらに、次回以降に触れる「持ち戻し免除の意思表示の推定」が及ぶ事案であれば、配偶者の具体的相続分から配偶者居住権の取得額を控除する必要がなくなります。

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