相続第16回目「改正相続法の概要―遺産分割に関する見直し⑤―」

弁護士の若林です。

 

今回は、遺産の分割前に遺産に属する財産を処分した場合の遺産の範囲について触れていきます。

 

改正相続法第906条の2

1 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。

2 前項の規定にかかわらず、共同相続人の一人または数人によって同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない。

 

 相続財産の共有状態の解消は、遺産分割手続きによる必要がある一方で、共同相続人が遺産分割前にその共有持分を処分することは認められています。そのため、遺産分割前に財産が処分された場合どのように対応すべきかが問題になることがありましたが、この点について明文の規定はありませんでした。

 

 実務上は、「遺産分割は遺産分割の時に存在する財産を共同相続人で分配する手続きである」という考え方に則り、原則は遺産分割時に実際に存在する財産を対象としつつ、例外的に遺産分割時には存在しなかった財産であっても共同相続人の全員がこれを遺産分割の対象に含める旨の合意をした場合には遺産分割の対象とする取り扱いがされてきました。

 

 第906条の2第1項は、この考え方を明文化したものです。

 

 そして、第906条の2第2項は、共同相続人の一人が他の共同相続人の同意を得ずに相続財産を処分した場合でも、処分がなかった場合と比べて多くの利得を得るという不公平が生じないよう遺産分割における調整を容易にすることを目的に定められたのです。

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