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沖縄や北海道の裁判所で訴えらえたら ②

2016-10-25

弁護士の大和田です。

引き続き,遠方の裁判所で訴えられた場合の対応について書きたいと思います。

今回取り上げるのは,「電話会議システム」についてです。

 

前回は「移送」を取り上げましたが,重要な証人が原告と被告の両所在地にいる場合などは,移送が認められないこともあります。

その場合,弁護士に事件処理を依頼していれば,弁護士が遠方の裁判所まで行き,訴訟対応していくことになりますので,裁判の度に自ら出廷する必要はありません。

しかし,例えば遠方の裁判所までの交通費,宿泊費,日当などはいただくことになりますので,裁判の度に経済的な負担は大きくなります。

また,出廷に一日を要するような遠隔地の場合には,丸一日予定のない日でなければ裁判期日が入らないので,なかなか裁判日が決まらず訴訟が遅滞することもあります。

そのような場合には,電話会議システムを利用し,依頼者様の負担を軽減するとともに,訴訟を円滑に進めていくことが考えられます。

電話会議システムとは,裁判所が電話会議システムの利用を相当と認められば,当事者の一方は裁判所まで出廷することなく,電話で裁判手続きを行うことができるというものです。

このように,遠方の裁判所で訴えらえた場合には,移送の他にも対応する手段はありますので,お気軽にご相談いただければと思います。

「交通事故における休業損害について」

2016-10-19

弁護士の小沼です。

今回は,交通事故における休業損害についてご説明いたします。

 

1 はじめに

休業損害とは,就労不能による収入の減少を損害と捉えたものです。

同損害に関しては,加害者が加入する保険会社等に対して,賠償請求していくことが可能となります。もっとも,損害として認められる範囲は,入通院等のため,実際に仕事を休んだ日数に限られます。

1日当たりの損害額に関しては,次のような試算することが一般的です。

 

2 被害者の収入算定の基礎

①給与所得者の場合

事故前3ヶ月間の平均賃金を基礎にして収入を算定します。

②個人事業主の場合

事故前年における確定申告の所得額を基礎にして収入を算定します。

③家事従事者(主婦)の場合

女子労働者全体の平均値を基礎にして収入を算定します。

④学生,無職者等の場合

原則として休業損害は認められません。

 

3 結語

今回は,交通事故における損害の1つである休業損害についてご説明させていただきました。交通事故に関しては,治療費・入通院慰謝料・後遺障害による逸失利益等の損害も存在します。今後も交通事故に関し,順次ご説明させていただく予定ですので,よろしくお願いいたします。

以 上

第15回全国倒産処理弁護士ネットワーク第15回全国大会

2016-10-11

弁護士の高田です。

全国倒産処理弁護士ネットワーク第15回全国大会(札幌)に参加してきました。場所は、北海道札幌市の差ポロ芸術文化の館で、10月1日に行われました。。

シンポジウムについては札幌地方裁判所の民事第4部総括判事からの札幌地方裁判所における倒産事件状況に関する特別講演が行われました。札幌地裁においては、配当形式が破産法208条の同意配当で終わる事件が多いとのことで、興味深く感じました。

また、日本大学大学院法務研究科/創価大学大学院法務研究科客員教授であるの伊藤眞先生の基調講演が行われました。破産者代理人(破産手続開始申立代理人)の地位と責任を中心としたものです。私の業務にとても密接な事柄です。破産管財人に対する不法行為とは何か等について破産法の理論から検討される講演はたいへん興味深いものでした。また、伊藤先生の基調講演に先立ち、破産者代理人の地位と責任に関する裁判例の紹介も行われました。多くの裁判例が集められておりたいへん参考になりました。

その後のパネルディスカッションは「法人破産における申立代理人の役割と立場」でした。裁判官、研究者、弁護士により多方面からのアプローチがなされていました。

今後ともさらに研鑽を重ねなければならないと感じる一日となりました。

法人破産手続き-その4「リース物件の扱い」-

2016-10-11

弁護士の若林です。 

4回のテーマは「リース物件の扱い」です。 

事業所には在庫商品以外にも様々な物があります。

そして、事業所にある物すべてが会社の所有物ということは稀で、複合機、電話機、PC、車や事業用機械などなど、リース物件もたくさん含まれていると思います。

さて、このリース物件、会社が破産する場合はどう扱われるのでしょうか。

3回で「(動産先取特権しかない)在庫商品の返品には応じられない」というお話をしましたが、リース物件も返品に応じてはいけないのでしょうか?

 

リース物件の契約関係をザックリ説明すると、

リース会社が注文者の希望する物件(例えば複合機)を注文者の代わりに販売会社から購入し、それを注文者に貸し出して注文者から毎月リース料を受領するというものです。

中途解約が認められておらず、これをファイナンス・リース契約といいます。

破産実務上、リース会社はリース物件に担保権を持っているとして別除権者として扱われています。

別除権者は、破産手続によらないで権利を行使することができます(破産法65条)。

そのため、リース物件はリース会社から引き上げ要請があればこれに応じることになります。

認定されない後遺症について 茨城県土浦市の一弁護士の考察

2016-09-26

弁護士の髙田です。

今日は、交通事故における後遺症の話を考えてみたいと思います。

交通事故の被害にあい、けがをした場合は、病院で治療を受けます。しかし、治療の結果、けがが完全になおらない場合もあります。このような場合に後遺症を検討することになります。

この後遺症には重いものから比較的軽度なものまであります。交通事故における後遺症は、1級から14級までに分けて検討することが一般的です。

この級の認定は、第三者機関によって行われています。

後遺症が認定されると、後遺症が残ってしまったことに対する慰謝料や、後遺症による労働能力の低下からくる、将来得られたはずの収入の減少分などを請求することができます。

ところで、一番軽度である14級の後遺症に認定されない場合はどうなるのでしょうか。

残念ながら、現在の実務上の運営は後遺症がないものと同様に扱われています。つまり、後遺症を受けたことによる慰謝料や、労働能力低下による収入減少分について全く請求できないこととなります。

しかし、これが妥当な結論なのでしょうか。例えば40歳の男性サラリーマンを例にとって考えてみると、後遺症を受けたことの慰謝料が100万円前後、収入減少分で同じく100万円前後認められることも少なくありません。しかし、14級に認定されなければ、事故による影響が残っていても0円となってしまうのは、バランスを欠くと言わざるを得ません。

特に、むち打ち症などの神経症状での認定は14級として認められるか否かは微妙な差異でしかないように見えることもあります。

このような場合には裁判を検討しても良いのではないかと私は考えています。

有意義な法律相談のために。

2016-09-06

弁護士の北村です。

 

弁護士による法律相談は、一定の時間(たとえば30分)に限られていることが通常です。当事務所では、時間を1分でも過ぎたら…という訳ではなく、なるべくじっくりお話を聞くように心掛けていますが、次の予定との兼ね合いもありますので、時間に限りがあることに変わりはありません。

今回は、初回の法律相談を有意義な時間にしていただくためにご準備いただきたいことについて、私個人の考えをまとめてみようと思います。

 

1 経緯

抽象的に言うと、「今までにこんな出来事があって、今こんな風に困っている」ことをお話しいただくところが、法律相談のメインです。ですので、いつ頃どんな出来事があったのか、という事実関係を頭の中で整理して相談に来ていただく方がベターだと思います。上手く話せないのではないか、とかど忘れしてしまうのではないか、と心配な方は、紙に簡単にまとめてみるのもよいでしょう。

また、裁判所や弁護士、相手方保険会社、消費者金融などから書類を受け取った、という方の場合には、もちろんその書類をお持ちください。

ところで、相談者さんの中には、十何枚にもなるレポートのように、事実関係を書き出してきて渡して下さる方もいらっしゃいます。弁護士は、裁判になった場合を見越して、書面の証拠があるか否かをとても重視します。他方で、法律相談の時には、なるべくご本人の口から事実関係を語ってもらいたい、という欲求を持っています。また、短い法律相談の時間内では、目で見るより耳で聞くほうが、素早く的確に情報を把握することができる気がします。ですので、事実関係を書き出していただく際には、あくまで口頭の話の補足用ということで、要点を絞って(A4用紙1枚~長くても3枚くらい)まとめていただいた方が、個人的にはありがたいと思っています。

 

2 証拠(になる可能性があるもの)

法的な見通しと選択すべき手続きについてアドバイスするためには、証拠になる可能性があるもので何が手元にあるか、あるいは今後入手できそうかについての情報も必要です。(他方で、証拠の有無にかかわらず、事実関係レベルで法的見通しが暗いケースも残念ながら存在します。)

具体的なケースにおいて証拠になりうるものの有無および内容については、法律相談時に口頭でお聞きし、必要があれば後日ご持参をお願いしますので、初回法律相談時に関係しそうなもの一切合切を持参しなければいけない訳ではありません。とはいえ、一般的に、どんな案件ではどんな証拠が必要になりうるのかについて、知っておいて損はないと思います。案件ごとにどんな証拠が必要になりうるのかについては、また回を改めて紹介したいと思います。

沖縄や北海道の裁判所で訴えられたら①

2016-08-31

弁護士の大和田です。今回からは遠方の裁判所で訴えられた場合の対応について書いていきたいと思います。

今日取り上げるのは「移送」についてです。

被告が遠方にいる場合には,原告側は,なるべく自分の近くの裁判所で訴えを提起してくることが多いです。

極端な話,茨城に住んでいながら,沖縄や北海道で訴えられることもあり得るわけです。そうすると,茨城にいながら,遠方の裁判に対応しなければならなくなり,当事者の負担は大きくなります。

そこで,民事訴訟法では,移送といって,別の裁判所で裁判を行うべきだという申立ができることになっています。

この申立の際には,証人の所在地や検証物の所在地などの事情を考慮して,こちらの裁判所でやる方が訴訟の著しい遅滞を避けることができますよ,というようなことを主張する必要があります。

この申立は,一見簡単なようではありますが,訴えを提起された早期の状態で事件の争点を把握し,尋問が必要とされるであろう証人は誰なのかを検討するなど,専門的な検討が必要になってきます。

ですから,遠方の裁判所で訴えられてしまった場合には,自分に有利な裁判所で裁判を進めることができないか,弁護士に相談してみてもよいと思います。

裁判か、それとも交渉か?

2016-08-25

弁護士の北村です。

 

裁判を受ける権利は、憲法上保障された権利です(日本国憲法第32条)。ですので、法律的な争いごとについて、裁判所の判断を受ける機会がたやすく損なわれるべきでないことは言うまでもありません。

 

他方で、(訴訟だけではなく調停・審判等も含む広義の)裁判を起こす、あるいは起こされるとなると、様々なコストやリスクが生じることも事実です。

第一に、時間がかかります。最初の期日は裁判を起こしてから1ヶ月以上先になりますし、2回目以降も期日が指定されるのは約1ヶ月おきになります。すぐに半年や一年という時間が経ってしまうのが実情です。

第二に、費用がかかります。裁判を起こす側は、争いの内容や金額に応じて収入印紙などを納付しなければなりません。もちろん、弁護士に依頼するとなれば、その費用も発生します。

第三に、結果に対するリスクがあります。証拠(それも、契約書やメールなどの客観的な証拠)がなければ、裁判を有利に進めることは難しくなります。また、相手に支払能力がなければ、裁判を起こしても効果は薄くなります。さらに、複雑な事案では、弁護士をもってしても結果を見通すことが難しくなります。このように様々な理由から、時間と労力と費用を費やしたけれど思うような結果にならない、というリスクがあります。

第四に、評判に対するリスクがあります。狭い地域コミュニティや業界においては、裁判をやっていること自体がネガティブに受け取られることもあります(このこと自体の善悪は微妙ですが、これを交渉のカードとして使える場合もあります)。

 

弁護士としては、裁判を受ける権利があることやご本人の意向を踏まえつつ、裁判で戦うのと交渉で終わらせてしまうのとでどちらが「より有利な」解決になりそうか、考えることになります。また、裁判になった場合を見越して証拠になりうるものを集めておく、という視点も重要になります。具体的な話は、また改めて紹介したいと思います。

 

「刑事事件における身柄解放について」

2016-08-22

弁護士の小沼です。

犯罪の嫌疑をかけられて身体拘束が長期化すると,勤務先や家庭などに大きな影響が出る可能性が高くなります。ですので,少しでも早い身柄解放を目指した活動は,弁護人にとってとても重要な活動になります。

本日は,刑事事件の各段階における身柄解放の手続きについて,ご説明させていただきます。

 

1 逮捕段階(72時間以内)

受任後,弁護士は担当検察官に連絡を取り,勾留請求を避けるべく交渉することになります。事実を争わない場合,早期に被害者との示談を成立させることが肝要です。なお,この段階では国選弁護人は選任されませんので,私選弁護人のみがこのような活動をすることができます。

2 勾留段階(起訴前/20日以内)

示談が成立していない場合には,引き続き被害者と示談交渉を行うことになります。事案によっては,勾留(延長)決定に対する準抗告や勾留取消請求を行ない,身柄解放を求めることもあります。

3 勾留段階(起訴後/裁判まで)

起訴されてしまった場合には,実刑判決を避けるべく,執行猶予付判決を求める弁護活動を行ないます。併せて,被告人が裁判に必ず出頭することを誓約したうえで,裁判までの身柄拘束を免れるべく,保釈請求を行うこともあります。保釈金の金額は事案により異なりますが,150万~200万前後となることが多いようです。なお,保釈金は被告人が裁判にきちんと出頭すれば戻ってくるお金です。

4 裁判

罰金刑のみが宣告された場合,罰金を支払う限り,改めて身体を拘束されることはありません。また,懲役刑が宣告されても,執行猶予付きの判決であれば,判決後に新たな犯罪行為を行なわない限り,身体を拘束されることはありません。

5 まとめ

弁護士が刑事事件を受任した場合には,速やかに依頼者の身柄が解放されるよう,様々な弁護活動を行っていくことになります。

以 上

法人破産手続きーその3「在庫商品の扱い」ー

2016-08-15

弁護士の若林です

 

第3回のテーマは、「在庫商品の扱い」です。

 

法人代表者の方は、経営が苦しくても、家族や従業員そして取引先との関係を守るためギリギリの状態まで取引を継続します。

そのため、やむなく破産を決めた時、お店に在庫商品がたくさん残っていることがよくあります。

商品が納品された時期が破産の申し立て時期と近接している場合や商品自体の価値が高い場合、売主である取引先から商品の返還を求められることがあります。

 

「納品された商品の代金を支払っていないのだから売主に返品するのが当然だ。」

そんな風に考える方が多いのではないでしょうか。

 

確かに、民法上、商品代金が未払いの場合に売主が代金や利息を他の取引先に優先して確保するために売った商品を回収することが認められています。

これを動産売買先取特権といいます(民法311条5号)。

ですが、動産先取特権があるからといって売主が直ちに商品を持って帰ってよいわけではありません。売主が動産先取特権を行使するためには競売手続きを取る必要があります。

そのため、買主としては、売主が競売手続きを取るまでは商品を引き渡すことはできませんし、競売の前に破産管財人が選任されていれば、商品の扱いについては管財人に委ねることになります。

 

もっとも、法人の取引では一見すると単純な売買契約に見えるけれど実は所有権留保がついている契約だったり委託販売契約だったりと様々な契約形態が混在しています。

契約形態によって破産法上の扱いも変わるため、安易に返却に応じてしまい後で問題になる場合もあります。

 

破産手続きの際の混乱を避けるためにも、早めのご相談をお勧めいたします。

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