Archive for the ‘債務整理に関する質問’ Category

法人破産手続き-その4「リース物件の扱い」-

2016-10-11

弁護士の若林です。 

4回のテーマは「リース物件の扱い」です。 

事業所には在庫商品以外にも様々な物があります。

そして、事業所にある物すべてが会社の所有物ということは稀で、複合機、電話機、PC、車や事業用機械などなど、リース物件もたくさん含まれていると思います。

さて、このリース物件、会社が破産する場合はどう扱われるのでしょうか。

3回で「(動産先取特権しかない)在庫商品の返品には応じられない」というお話をしましたが、リース物件も返品に応じてはいけないのでしょうか?

 

リース物件の契約関係をザックリ説明すると、

リース会社が注文者の希望する物件(例えば複合機)を注文者の代わりに販売会社から購入し、それを注文者に貸し出して注文者から毎月リース料を受領するというものです。

中途解約が認められておらず、これをファイナンス・リース契約といいます。

破産実務上、リース会社はリース物件に担保権を持っているとして別除権者として扱われています。

別除権者は、破産手続によらないで権利を行使することができます(破産法65条)。

そのため、リース物件はリース会社から引き上げ要請があればこれに応じることになります。

法人破産手続きーその3「在庫商品の扱い」ー

2016-08-15

弁護士の若林です

 

第3回のテーマは、「在庫商品の扱い」です。

 

法人代表者の方は、経営が苦しくても、家族や従業員そして取引先との関係を守るためギリギリの状態まで取引を継続します。

そのため、やむなく破産を決めた時、お店に在庫商品がたくさん残っていることがよくあります。

商品が納品された時期が破産の申し立て時期と近接している場合や商品自体の価値が高い場合、売主である取引先から商品の返還を求められることがあります。

 

「納品された商品の代金を支払っていないのだから売主に返品するのが当然だ。」

そんな風に考える方が多いのではないでしょうか。

 

確かに、民法上、商品代金が未払いの場合に売主が代金や利息を他の取引先に優先して確保するために売った商品を回収することが認められています。

これを動産売買先取特権といいます(民法311条5号)。

ですが、動産先取特権があるからといって売主が直ちに商品を持って帰ってよいわけではありません。売主が動産先取特権を行使するためには競売手続きを取る必要があります。

そのため、買主としては、売主が競売手続きを取るまでは商品を引き渡すことはできませんし、競売の前に破産管財人が選任されていれば、商品の扱いについては管財人に委ねることになります。

 

もっとも、法人の取引では一見すると単純な売買契約に見えるけれど実は所有権留保がついている契約だったり委託販売契約だったりと様々な契約形態が混在しています。

契約形態によって破産法上の扱いも変わるため、安易に返却に応じてしまい後で問題になる場合もあります。

 

破産手続きの際の混乱を避けるためにも、早めのご相談をお勧めいたします。

全国倒産処理弁護士ネットワーク第33回関東地区研修会

2016-07-04

弁護士の髙田です。平成28年7月2日に、全国倒産処理弁護士ネットワーク関東地区第33回研修会(神奈川県開催)に参加しました。会場は、神奈川県川崎市幸区堀川町ソリッドスクエア地下1階にあるソリッドスクエアホールです。ソリッドスクエア内には噴水などもあり、とても綺麗で便利な会場でした。また、会場はJR川崎駅に近く、アクセスも大変良く、車いすを利用してもなんら不自由のないところでした。
研修の内容は、まず、現役の裁判官から、現在の神奈川県における倒産事件の処理・運用状況の説明がありました。それから、法科大学院教授の破産免責制度の意義と諸問題に関する基調講演があります。その後、現役の弁護士らによる、パネルディスカッションを行われます。この研修会では、最新の情報・問題意識に触れる貴重な機会を得ることができました。
免責制度とは、債務を帳消しする制度であり、破産者にとって破産手続きをとるもっとも大きな理由です。免責が認められなければ、破産を申立てる人にとって経済的再建を図ることができません。免責不許可事由たとえば、浪費や賭博などをしたことによって著しく財産を減少させたり、過大な債務を負担した場合などは、裁判所が、免責が相当であると認める場合でなければこれが認められません。しかし、このような場合であっても、その後の行動などで免責を目指さなければならない場合も少なくありません。新たな出発を目指す方にとって重要な免責に関する知識を深めることができ、意義のある研修となりました。

 

法人破産手続きーその2「取引先への支払い」

2016-06-24

弁護士の若林です。

 

第2回のテーマは、「取引先への支払い」です。

 

破産手続きを進めることが決まると、債務額を確定させるため、

まず、債権者への支払いを止めます。

 

この時、債権者に長年の取引先が含まれていたりすると、「長い付き合いがあるから・・・」と、一部の取引先にだけは払いたいという希望を告げられることがあります。

 

取引先にできるだけ迷惑をかけたくない

そんな心情からくる言葉だと思います。

 

ですが、破産手続きを取ると決めた以上、一般債権者である一部の取引先にだけ返済することはできません。

破産制度は、負債が多く全額返済できなくなってしまった債務者の生活再建を図るために負債の支払を免除するものです。

支払いを免除する代わりに、手続上は全債権者を平等に扱います。

ここでは、取引期間やこれまでの人間関係などは基本的に考慮されません。

もし、一部の取引先にだけ支払ってしまった場合、それは一部の取引先を優遇したことになるため支払った金額を取引先から返してもらわなければなりません。

そうなると、結局、取引先にも迷惑がかかるわけです。

 

良かれと思って取った行動が、法律上認められず、逆に迷惑をかけてしまう。

そんなことにならないよう、事前に専門家に相談することをお勧めします。

法人破産手続ーその1「従業員のお給料の扱い②」

2016-05-09

弁護士の若林です。

 

今回は未払賃金立替払制度の内容について説明します。

 

法人が法律上の破産手続きを進める中で未払賃金等の立替払いを受けるためには、

次の要件をすべて充たしている必要があります。

 

まず、事業主側の要件として

① 労災保険の適用事業の事業主、かつ、1年以上事業を実施していた

② 倒産したこと

次に、労働者側の要件として

③ 破産手続開始の申立日の6ヶ月前から2年間に退職したこと

④ 未払賃金額等について、破産管財人が証明していること

⑤ 破産手続開始の決定の日の翌日から2年以内に立替払請求をしていること

 

これらの要件を充たす場合には、退職日の6ヶ月前から立替払請求日の前日までに支払期日が到来している定期給与と退職金を立替えてもらうことができます。

ただし、ボーナスは立替払いの対象とはなりませんし、未払総額が2万円未満のときにも対象外となります。

立替払いの金額は未払賃金総額の8割ですが、退職時の年齢に応じた上限が定められています。

 

各要件の細かい説明は割愛させていただきますが、法人の代表者の方に注目していただきたいのは制度を利用するためには期間制限があるということです。

未払賃金立替払制度の対象となるのは、③の要件のとおり、裁判所に破産手続開始の申立てをする6ヶ月前までに退職した人だけです。

例えば、ある法人が2016年5月1日に裁判所に破産手続開始の申し立てをした場合、立替払いを受けられるのは2015年11月1日以降に退職した人のみ、ということになります。

つまり、破産手続開始の申立てが遅くなると、そもそも未払賃金立替払制度の利用ができない事態に陥る可能性が出てくるのです。

 

せっかくの制度が使えない・・・ということにならないためにも、早めにご相談にいらっしゃることをお勧め致します。

第32回全国倒産処理弁護士ネットワーク 水戸

2016-03-23

弁護士の高田です。

水戸で行われた、第32回全国倒産処理弁護士ネットワークに参加してきました。

地元での開催ということもあり、楽にアクセスすることができます。

いつものように裁判所から、茨城県内の破産等の法的整理申し立て状況が、伝えられます。

破産手続きには、事業者や不動産などの財産を持つ方などの手続きである管財手続きと生活費の借り入れなどで返済可能額を超えてしまった場合などの同時廃止の手続きがあります。

どちらの手続きが選択されるかは、裁判所の判断によるのですが、近年管財事件になることが多くなったようです。

もちろん、管財事件が選択されるのは、管財事件として調査などの必要性がある場合ですが、管財事件が選択されると、少なくとも管財人の費用として別途25万円から30万円の現金が必要になります。破産等の法的整理に際して、この費用を捻出することはなかなかたいへんです。しかしながら、計画的に積み立てをすることにより確保するなどいくつか考えられる方法もありますので、弁護士にご相談をいただけるとよいと思います。

この研修会では裁判所、弁護士などが参加して行うパネルディスカッションも行われまし総合司会の飯島章弘先生の素晴らしい進行で、本では学べない勉強をすることができました。あらためて、本研修会の良さを感じることができました。次回も可能な限り参加したいと感じました。

法人破産手続 - その1「従業員のお給料の扱い①」 -

2016-03-09

弁護士の若林です。

 

法人破産手続第1回目のテーマは「従業員のお給料に関するもの」です。

 

従業員を抱える法人代表者の方が破産手続きを進める中で一番に気にされるのが、お給料の支払いです。

「既に給料の未払いが発生している。」

「今月は何とか払えたが来月分が払えない。」

「従業員達に迷惑をかけるのは何とかして回避したい。」

こんなご相談をよく受けます。

 

お給料は従業員やその家族の生活を支える大切なものです。支払いが滞れば法人だけでなく従業員の生活まで立ち行かなくなってしまいます。

そのため、破産法では、従業員の破産手続開始前3カ月間の給料請求権を財団債権として扱い、破産手続とは関係なく随時支払うことを認めています(破産法149条1項)。

また、上述期間以外に発生した給料請求権については、破産手続きの中で処理することにはなりますが、優先的破産債権として一般破産債権よりも優先的に配当が受けられるように位置づけています(破産法98条、民法306条2号)。

 

もっとも、破産手続開始時に会社に資産があればいいでのすが、それすらないという場合も多くあります。いくら優遇的な扱いをされても、支払に充てる原資がなければ意味がありません。

 

この場合には、「未払賃金立替払制度」を利用することができます。

未払賃金立替払制度とは、企業の倒産によって毎月の賃金や退職金が支払われないまま退職した労働者に、国が事業主に代わって、未払賃金の8割を立替払いする制度です。

利用要件はありますが、破産する法人に資力がない場合の労働者のためのセーフティーネットとして大きな役割を果たしています。

 

未払賃金立替払制度の利用要件等詳細について説明を・・・

と思ったのですが、少し長くなってしまいました。

制度の詳しい説明は、また次回に致します。

 

次回もぜひお付き合いくださいね。

会社・事業の再生・法的整理・破産 茨城県土浦市の弁護士高田知己

2016-02-29

弁護士の高田です。

会社・事業の経営者は大変です。上場企業の社長というのであればともかく、小さな会社・事業の場合であれば、社長自ら、営業を行い、人事や経理、本業への従事、金策等金融機関との対応等々、休みなく働いている方が多いのではないでしょうか。

ボタンの掛け違いなどから、会社・事業の経営が不振に陥ってしまった場合などはさらに大変です。このような事情に陥ってしまうと、どのように会社・事業を立て直してゆくのか、整理をするのかの見極めを、社長お一人で判断するのはとても困難です。にもかかわらず、法律は経営者にとても厳しい判断能力を要求している側面があります。

こんな時は弁護士に相談をしてみてください。ご事情をうかがって会社・事業の将来、経営者の方、従業員など会社・事業をとりまくすべての方々にとって一番良い解決方法を一緒に考えさせていただきたいと考えています。

返済する前にご相談を

2016-01-29

弁護士の大和田です。

 

当事務所では,債務整理案件も多く扱っておりますが,今日はその中でも消滅時効の援用により,債務を消滅させる場合についてお話ししたいと思います。

 

消費者金融から借入をした場合,その最終返済日または返済期限(どちらか遅い方)から5年が経過していれば,消滅時効の援用により,債務を消滅させることができます。

 

しかし,時効が援用できない例外的な場合もあります。

例えば,5年経過していたとしても,債権者からの求めに応じて,少額でも返済してしまうと,債務があることを承認したものとみなされ,時効の援用ができなくなります。

このケースについては特に気を付けていただきたいところです。

せっかく消滅時効が援用できるのに,弁護士に相談する前に返済してしまい,消滅時効が援用できなかったというケースは少なくありません。

 

何年もの間返済をせず,放置されていたのに,突然債権者から支払いを求められるようになったという場合には,消滅時効を援用できる可能性がありますから,返済の前にご相談いただくことをお勧めします。

法人破産手続ーはじめにー

2016-01-18

弁護士の若林です。

東京商工リサーチの発表によれば、2015年(平成27年)の全国企業倒産件数(負債1000万円以上)は8,812件と25年ぶりに9,000件を下回ったそうです。

企業倒産件数は年々減少傾向にありますが、当事務所で受ける相談件数は一定数あり、毎年複数件の法人破産の申し立てを行っています。

 

ご相談を受けた法人が事業継続もしくは再生が可能かどうかは、決算書等資金繰りに関する資料から大体の見当をつけることができます。

もっとも、資金繰りに関する資料からは法人代表者の方が事業継続のために並々ならぬ努力をしてきたことが読み取れますし、面談の際には、法人を「わが子」のように大切に育ててきた経緯、従業員やその家族、取引先関係者に対する思い等を伺います。

そのため、資料だけで判断することはせず、毎回、私達が考えられる限りの可能性を模索し、何とか事業継続の途がないかを検討するようにしています。

しかしながら、検討に検討を重ねた結果「破産」という選択肢しかなければ、私達はその事実を伝えるしかありません。弁護士にとって、この瞬間が一番辛いです。「もう少し早く相談に来てもらえれば・・・」と悔しい思いをすることがしばしばあります。

 

とはいえ、弁護士の感じる辛さなど法人代表者の方の辛さの比ではありません。ですから、私達は、いつも法人代表者の方の不安を少しでも解消できるよう全力でサポートしようと心掛けています。

 

次回からは、法人破産の手続きについて連載しようと思います。特に法人代表者の方のお役に立てれば幸いです。

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