Archive for the ‘法律豆知識’ Category

沖縄や北海道の裁判所で訴えらえたら ②

2016-10-25

弁護士の大和田です。

引き続き,遠方の裁判所で訴えられた場合の対応について書きたいと思います。

今回取り上げるのは,「電話会議システム」についてです。

 

前回は「移送」を取り上げましたが,重要な証人が原告と被告の両所在地にいる場合などは,移送が認められないこともあります。

その場合,弁護士に事件処理を依頼していれば,弁護士が遠方の裁判所まで行き,訴訟対応していくことになりますので,裁判の度に自ら出廷する必要はありません。

しかし,例えば遠方の裁判所までの交通費,宿泊費,日当などはいただくことになりますので,裁判の度に経済的な負担は大きくなります。

また,出廷に一日を要するような遠隔地の場合には,丸一日予定のない日でなければ裁判期日が入らないので,なかなか裁判日が決まらず訴訟が遅滞することもあります。

そのような場合には,電話会議システムを利用し,依頼者様の負担を軽減するとともに,訴訟を円滑に進めていくことが考えられます。

電話会議システムとは,裁判所が電話会議システムの利用を相当と認められば,当事者の一方は裁判所まで出廷することなく,電話で裁判手続きを行うことができるというものです。

このように,遠方の裁判所で訴えらえた場合には,移送の他にも対応する手段はありますので,お気軽にご相談いただければと思います。

有意義な法律相談のために。

2016-09-06

弁護士の北村です。

 

弁護士による法律相談は、一定の時間(たとえば30分)に限られていることが通常です。当事務所では、時間を1分でも過ぎたら…という訳ではなく、なるべくじっくりお話を聞くように心掛けていますが、次の予定との兼ね合いもありますので、時間に限りがあることに変わりはありません。

今回は、初回の法律相談を有意義な時間にしていただくためにご準備いただきたいことについて、私個人の考えをまとめてみようと思います。

 

1 経緯

抽象的に言うと、「今までにこんな出来事があって、今こんな風に困っている」ことをお話しいただくところが、法律相談のメインです。ですので、いつ頃どんな出来事があったのか、という事実関係を頭の中で整理して相談に来ていただく方がベターだと思います。上手く話せないのではないか、とかど忘れしてしまうのではないか、と心配な方は、紙に簡単にまとめてみるのもよいでしょう。

また、裁判所や弁護士、相手方保険会社、消費者金融などから書類を受け取った、という方の場合には、もちろんその書類をお持ちください。

ところで、相談者さんの中には、十何枚にもなるレポートのように、事実関係を書き出してきて渡して下さる方もいらっしゃいます。弁護士は、裁判になった場合を見越して、書面の証拠があるか否かをとても重視します。他方で、法律相談の時には、なるべくご本人の口から事実関係を語ってもらいたい、という欲求を持っています。また、短い法律相談の時間内では、目で見るより耳で聞くほうが、素早く的確に情報を把握することができる気がします。ですので、事実関係を書き出していただく際には、あくまで口頭の話の補足用ということで、要点を絞って(A4用紙1枚~長くても3枚くらい)まとめていただいた方が、個人的にはありがたいと思っています。

 

2 証拠(になる可能性があるもの)

法的な見通しと選択すべき手続きについてアドバイスするためには、証拠になる可能性があるもので何が手元にあるか、あるいは今後入手できそうかについての情報も必要です。(他方で、証拠の有無にかかわらず、事実関係レベルで法的見通しが暗いケースも残念ながら存在します。)

具体的なケースにおいて証拠になりうるものの有無および内容については、法律相談時に口頭でお聞きし、必要があれば後日ご持参をお願いしますので、初回法律相談時に関係しそうなもの一切合切を持参しなければいけない訳ではありません。とはいえ、一般的に、どんな案件ではどんな証拠が必要になりうるのかについて、知っておいて損はないと思います。案件ごとにどんな証拠が必要になりうるのかについては、また回を改めて紹介したいと思います。

沖縄や北海道の裁判所で訴えられたら①

2016-08-31

弁護士の大和田です。今回からは遠方の裁判所で訴えられた場合の対応について書いていきたいと思います。

今日取り上げるのは「移送」についてです。

被告が遠方にいる場合には,原告側は,なるべく自分の近くの裁判所で訴えを提起してくることが多いです。

極端な話,茨城に住んでいながら,沖縄や北海道で訴えられることもあり得るわけです。そうすると,茨城にいながら,遠方の裁判に対応しなければならなくなり,当事者の負担は大きくなります。

そこで,民事訴訟法では,移送といって,別の裁判所で裁判を行うべきだという申立ができることになっています。

この申立の際には,証人の所在地や検証物の所在地などの事情を考慮して,こちらの裁判所でやる方が訴訟の著しい遅滞を避けることができますよ,というようなことを主張する必要があります。

この申立は,一見簡単なようではありますが,訴えを提起された早期の状態で事件の争点を把握し,尋問が必要とされるであろう証人は誰なのかを検討するなど,専門的な検討が必要になってきます。

ですから,遠方の裁判所で訴えられてしまった場合には,自分に有利な裁判所で裁判を進めることができないか,弁護士に相談してみてもよいと思います。

裁判か、それとも交渉か?

2016-08-25

弁護士の北村です。

 

裁判を受ける権利は、憲法上保障された権利です(日本国憲法第32条)。ですので、法律的な争いごとについて、裁判所の判断を受ける機会がたやすく損なわれるべきでないことは言うまでもありません。

 

他方で、(訴訟だけではなく調停・審判等も含む広義の)裁判を起こす、あるいは起こされるとなると、様々なコストやリスクが生じることも事実です。

第一に、時間がかかります。最初の期日は裁判を起こしてから1ヶ月以上先になりますし、2回目以降も期日が指定されるのは約1ヶ月おきになります。すぐに半年や一年という時間が経ってしまうのが実情です。

第二に、費用がかかります。裁判を起こす側は、争いの内容や金額に応じて収入印紙などを納付しなければなりません。もちろん、弁護士に依頼するとなれば、その費用も発生します。

第三に、結果に対するリスクがあります。証拠(それも、契約書やメールなどの客観的な証拠)がなければ、裁判を有利に進めることは難しくなります。また、相手に支払能力がなければ、裁判を起こしても効果は薄くなります。さらに、複雑な事案では、弁護士をもってしても結果を見通すことが難しくなります。このように様々な理由から、時間と労力と費用を費やしたけれど思うような結果にならない、というリスクがあります。

第四に、評判に対するリスクがあります。狭い地域コミュニティや業界においては、裁判をやっていること自体がネガティブに受け取られることもあります(このこと自体の善悪は微妙ですが、これを交渉のカードとして使える場合もあります)。

 

弁護士としては、裁判を受ける権利があることやご本人の意向を踏まえつつ、裁判で戦うのと交渉で終わらせてしまうのとでどちらが「より有利な」解決になりそうか、考えることになります。また、裁判になった場合を見越して証拠になりうるものを集めておく、という視点も重要になります。具体的な話は、また改めて紹介したいと思います。

 

なぜ弁護士は証拠証拠と言うのか?

2016-02-08

弁護士の北村です。

立春を過ぎましたが、まだまだ寒い日が続きますね。

 

さて、私たち弁護士は、皆さんからお話を聞くとき、証拠、それも書類などの客観的な証拠があるかどうかをとても気にします。それはどうしてなのでしょうか。

 

弁護士に相談するような争いごとが起こった場合、少なからず、当事者双方の事実認識が食い違っています。もう話し合いではらちが明かない、裁判で白黒付けましょう、と思うでしょう。

ところで、裁判では「ある事実の有無について当事者間に争いがある場合、その事実の有無は証拠から証明しなければいけない」というルールがあります。そして多くの場合、「証拠から事実を証明する責任は、訴えようとする者が負う」というルールが妥当します。

 

そんなの証人がいるから大丈夫、と言いたいところですが、仮に相手が真っ向から事実を争ってきて、相手の方にも証人がいる、そして他に客観的な証拠は全くないという事案だとしたら、こちらの勝ち目は薄いでしょう。客観的な証拠があるかないかは、事案の行く末を決定的に左右するといえるのです。

 

とはいえ、ある事案について、どんな客観的証拠があればどのくらい勝ち目があるか、またどんな手続を取るのが最も有効なのかの判断は、相手がどこまで事実を認めてくれるかとも関連して、とても難しいところです。弁護士によって見解が分かれてもおかしくはありません。また、証拠が必ずしも十分にはなくとも、具体的な事情いかんでは、有効な手段を取りうることもあります。

今回は難しいテーマになってしまいましたが、悩むより、まず弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

 

 

弁護士費用について

2015-10-05

弁護士の小沼です。

弁護士事務所(法律事務所)は,なかなかに敷居が高い場所かと思います。そこで,その敷居がいくらかでも下がるよう,弁護士費用についてご説明いたします。

 

1 法律相談

当事務所の場合であれば,「法律相談料」30分につき5,400円(消費税8%込)となります。なお,東日本大震災時に茨城県内の一部地域にお住まいだった方は,30分の無料相談が可能な場合があります。

また,弁護士に相談したからといって,すぐに事件処理を依頼したことにはなりません。相談とは別に,事件処理を依頼する契約を結ばない限り,後述の費用は発生しません。つまり,相談のみでも可能です。

 

2 弁護士に事件処理を依頼する場合

弁護士に事件処理を依頼した場合には,以下の各費用が発生することがあります。

「着手金」とは,弁護士に事件処理を依頼した場合にかかる費用です。事件処理がうまくいったかどうかにかかわらず,発生します。

「報酬金」とは,弁護士の事件処理が一部でも成功した場合に発生する費用です。一般的には,請求した側であれば獲得した金額に応じて,請求を受けた側であれば減額した金額に応じて発生します。

「実費」とは,弁護士が事件処理に際し,切手や印紙を使用したり,登記事項証明書を取得したりする場合等,実際にかかった費用のことです。

 

3 まとめ

弁護士に相談する場合には「法律相談料」が,その後,事件処理を依頼すれば「着手金」が,事件処理がうまくいけば「報酬金」が,弁護士が事件処理に切手や印紙等を使用すれば「実費」がかかることになります。

現在,弁護士報酬は自由化されており,金額に決まりはありません。もっとも,多くの事務所では「旧日本弁護士連合会報酬等基準」をもとに弁護士報酬が決めているようです。

登記と現状が一致しない場合

2015-09-01

弁護士の若林です。

皆さんは、ご自身が所有する不動産の登記簿を見たことがありますか?

登記簿には不動産に関する様々な情報が記載されています。例えば、登記簿の「甲区欄」を見れば、「誰が」「いつ」「どのような原因」でその不動産を取得したのか、その不動産の「歴史」を知ることができます。

ちなみに、登記簿を取得できるのは、法務局です。

 

通常、不動産に権利変動があった場合には、法務局に申請し、変動の内容を登記簿に反映してもらいます。そのため、登記簿の記載内容と現実の権利関係は一致しています。

しかし、時々、登記簿上の権利関係と現実の権利関係とが一致しないことがあります。不一致の原因には様々考えられますが、権利関係が一致していないと、不動産の売却や処分、担保権設定等ができず、不動産の活用に支障を来してしまいます。この場合、登記簿と現状の不一致を修正する手続きを取らなければなりませんが、不一致のまま長期間放置していた場合、当事者の行方が分からない、相続等で関係者が複数人いる等の事情が生じてしまい、対応に非常に苦慮することとなります。

場合によっては、訴訟等で不一致状態を解消せざるを得ないこともあります。

 

訴訟対応は私達弁護士の得意分野です。

もし、ご自身の不動産登記簿を見て、「権利関係が不一致の状態だ!」なんてことがありましたら、弁護士に相談するという選択肢も忘れないでくださいね。

債権回収のイロハ

2015-07-22

弁護士の北村です。

個人の方、事業者の方を問わず、売掛金や貸したお金の支払いが滞って困っている、といったご相談は少なくありません。当事者間の話し合いで解決できればいいのですが、上手くいかなかった場合、次の手を考える必要が出てきます。

上記のような債権回収の案件を弁護士が受任した場合、まずは弁護士から相手方に、請求内容を記載した内容証明郵便を送ることが多いです。弁護士から書類が届いたことによって、相手方の対応が変わる可能性もあります。

弁護士が窓口となって交渉しても当事者間の隔たりが埋まらない、あるいは交渉すらできない場合には、訴訟を起こすことが有力な選択肢になります。訴訟を起こして勝訴判決等の債務名義を得られれば、相手方がそれでも支払いに応じない場合、強制執行手続を取ることが可能になります。

ただ、相手方に差し押さえる資産が全くない、あるいはこちらが把握している資産についての情報が足りない場合、強制執行手続は失敗に終わってしまいます。預貯金については具体的な支店名まで把握できるか、給与債権については相手方の勤務先を特定できるかなど、訴訟提起の時点で慎重な調査と見通しが必要です。弁護士による調査が有効な場面もあります。

債権回収は、(特に相手が事業者の場合)時間との勝負という側面もあります。まずは弁護士にご相談ください。

弁護士の活動

2015-06-29

弁護士の若林です。

 

みなさんは、普段「弁護士の仕事」についてどのようなイメージをお持ちでしょうか。

ドラマや小説等では法廷での弁護活動が取り上げられていることが多いので、やはり、法廷で議論を繰り広げ、白熱した尋問をするイメージが強いでしょうか?

 

実際はどうか・・・というと、法廷での活動はもちろんですが、それ以外の場所でも色々な活動を行っています。

市役所や商工会議所等へ出張法律相談に行くことはしばしばですし、交通事故現場等紛争の対象となっている現場に行って、自分の目で状況を確認し、証拠の保全・収集を行うこともよくあります。

訴訟を起こした際に相手方に送達ができなければ、相手方の住所地に行って在宅調査をすることもあります。

 

これらは、弁護士の活動のごくごく一部で、この他にもアチコチ飛び回っており、事務所を不在にすることが多いです。

そのため、ご相談者様からの連絡に対応しにくいという事態が生じてしまうこともあります。

もっとも、当事務所では複数の弁護士が所属しており、茨城県内を中心にフットワーク軽く活動しつつ、ご相談者様からのご連絡にも対応するという体制を整えていますのでご安心ください。

境界問題に関する研修会

2015-04-20

弁護士の若林です。

4月11日(土)に水戸京成ホテルで開催された「センターいばらき研修会」に参加してきました。

この研修会は、茨城土地家屋調査士会、茨城県弁護士会、及び境界問題解決支援センターいばらきが主催したもので、午後2時~午後5時半まで二部制で構成されていました。

第1部で、法務局職員による、筆界特定制度の概要及び現状について、境界確定訴訟との比較を交えた講義が行われた後、続く第2部では、境界問題に関する事例を題材に、土地家屋調査士と弁護士が、問題点や疑問点について意見交換を行いました。

土地家屋調査士は筆界を、弁護士は所有権界を意識した事例の捉え方をしており、見方が全く違うため、刺激的な意見交換ができ、とても充実したものになりました。

当事務所でも、境界問題に関するご相談を受けることがありますので、今回の研修で得たものを実務に役立てていければと思います。

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