Archive for the ‘法律豆知識’ Category

職務上請求について。

2020-11-24

弁護士の北村です。

今日は,職務上請求についてお話をしようと思います。

弁護士が相手方に対してアクションを起こしていく場合,裁判手続にせよ,任意の交渉にせよ,相手方の所在が判明していることが第一関門といえます。

しかし,依頼者ご本人は相手方の細かい住所を把握していない場合も少なくありません。

このような場面を想定して,弁護士等の有資格者について,住民票および戸籍等の職務上請求という制度が認められています(住民基本台帳法第12条の3第2項,戸籍法第10条の2第3項~第5項)。

請求の要件は法律上きっちり定められており,不正請求を防ぐため,日本弁護士連合会の統一書式によって請求することとなっています。また,取得した住民票,戸籍等を請求の目的以外に使用することは固く禁じられています。

また,住民票,戸籍等の調査そのもののご依頼をお受けすることはできません。あくまでも,相手方に何らかの請求等をしていくご依頼を遂行するために必要な限度で認められた請求,ということになります。

相続第14回目「改正相続法の概要―遺産分割に関する見直し③」

2020-09-21

弁護士の若林です。

今回も預貯金の払戻し制度について説明していきます。

 

前回説明した平成28年最高裁判例により預貯金も遺産分割の対象とされたため、各金融機関は、相続人の一人からの法定相続分相当額の預金引き出し請求を認めない方針を強化しました。

その結果、相続人全員の同意が得られない場合、遺産分割が成立するまでの間は預貯金を引き出すことができず相続債務の支払いに充てることが困難となりました。

被相続人の預貯金が引き出せないことで、被相続人のお金で生計を立てていた相続人の生活費が捻出できない、相続人が葬儀費用を用意することができないというケースも生じるようになりました。

 

この不都合に対応するため創設されたのが「遺産分割前における預貯金の仮払い制度」です。

 

民法第909条の2

各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に第900条及び901条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部分割によりこれを取得したものとみなす。

 

条文によると、相続人が単独で引き出せる金額の計算式は以下のとおりとなります。

 

相続開始時の預貯金債権の額 × 3分の1 × 払い出しを求める相続人の法定相続分

 

例えば、相続開始時に預貯金残高が900万円ある場合、被相続人の配偶者は150万円(900万円×3分の1×2分の1=150万円)を単独で引き出すことができます。

 

では、相続開始時の預金残高が9000万円あった場合、被相続人の配偶者は1500万円(9000万円×3分の1÷2分の1=1500万円)を単独で引き出すことができるのかというと、これはできません。

条文のかっこ書きに記載があるように、法務省令で引き出せる上限額が決められています。

法務省令で定める上限額は150万円です。

 

したがって、どんなに多額の預貯金がある方でも相続人が単独で引き出せる額は150万円までとなります。

 

相続第13回目「改正相続法の概要ー遺産分割に関する見直し②ー」

2020-07-13

 

弁護士の若林です。

遺産分割に関する見直しのうち、②遺産分割前における預貯金の仮払い制度の新設について触れていきます。

この制度が新設された経緯には平成28年12月19日の最高裁判例が大きく関係しています。

そのため、今回はこの最高裁について説明します。

 

《最高裁判例が出る前》

 

相続財産のうち、可分債権は相続と同時に分割されます。

そして、預貯金も可分債権として相続が発生すると当然に相続人が相続分に応じて取得するものとして扱われてきました。

例えば、夫婦、子供2人家族で、父が預金1000万円を残して亡くなったとします。この場合、父が亡くなったと同時に、母が500万円、子供たちが250万円ずつ相続したと扱われるわけです。

遺産分割を経る必要がないため、遺産分割調停・審判においては、全相続人の合意がない限り、相続財産の対象として扱うことができませんでした。

 

その結果、合意がない場合には預金は法定相続分で分けられることになり、生前贈与や特別受益といった事由が反映されず相続人間の実質的公平が確保できないことがありました。

 

《最高裁判例が出た後》

 

最高裁判例の事例は、配偶者のいない被相続人が亡くなり、2人の相続人が争った事案です。

被相続人の遺産として約258万円相当の不動産と4000万円以上の預貯金債権があったほか、相続人の一人が約5500万円の生前贈与を受けていたという事情がありました。

第一審や控訴審では、預貯金は合意がない限り遺産分割の対象とすることはできないとした上で、約5500万円の生前贈与を特別受益とし、その結果生前贈与を受けていた相続人の具体的相続分は0となり、他の相続人が不動産を取得すべきものと判断していました。

 

当事者からの抗告を受け、最高裁は、

遺産分割の仕組みが共同相続人間の実質的公平を図ることを旨とすることや、遺産分割手続きの実務上は、現金のように、評価についての不確定要素が少なく、具体的な遺産分割の方法を定めるに当たっての調整に資する財産を遺産分割の対象とすることに対する要請も広く存在することを指摘した上で、預貯金の法的性質について以下のように触れました。

「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。」

つまり、相続人全員の合意の有無にかかわらず、預貯金債権も遺産分割の対象となると判断したのです。

 

 

相続第12回目「改正相続法の概要ー遺産分割に関する見直し①」

2020-02-24

弁護士の若林です。

今回は「遺産分割に関する見直し」のうち,①配偶者保護のための方策,具体的には「持戻し免除の意思表示の推定」について触れていきます。

本題に入る前に,
前提知識としてまずは特別受益の制度について説明します。
条文は特別受益について以下のとおり定めています。

民法903条 第1項
 共同相続人中に,被相続人から,遺贈を受け,又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは,被相続人が相続開始の時において有した財産の価格にその贈与の価格を加えたものを相続財産とみなし,第900条から第902条までの規定により算出した相続分の中からその遺贈又は贈与の価格を控除した残額をもってその者の相続分とする。

 つまり,共同相続人の中に,被相続人から遺言によって財産を譲り受けたり,生前に遺産の前渡しとなるような多額の贈与を受けていた者がいる場合,その譲り受けた財産の価格や贈与の価格を相続財産の中に計算上加え,遺産分割をするというものです。
 この譲り受けた財産や贈与の額を相続財産に加えることを,「特別受益の持戻し」といいます。
 
 そのため,例えば夫が妻に居住用不動産を贈与した場合,遺産分割においては,妻は既に居住用不動産の価格を取得したものとして扱うのが原則ということになります。つまり,遺産分割における妻の取得額は居住用不動産の価格分減少することになります。

 

 今回の改正相続法では,民法903条に以下の条文が新たに追加されました。

民法903条 第4項
 婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が,他の一方に対し,その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは,該当被相続には,その遺贈又は贈与についえ第1項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。

 この条文により,婚姻期間が20年以上の夫婦間での居住用不動産の遺贈又は贈与については,特別受益の規定を適用しない旨の意思表示,すなわち持戻し免除の意思表示があったものと推定され,居住用不動産の遺贈又は贈与を特別受益として扱わずに夫婦一方の具体的相続分を計算することができます。(ただし,居住用不動産の遺贈又は贈与の時に婚姻期間が20年以上経過している必要があります。)
 なお,条文上はあくまでも「推定する。」となっておりますので,被相続人が異なる意思を示している場合には本項の適用はありません。
 

民法(債権法)改正研修会

2018-12-05

弁護士の北村です。

 

先日,茨城県弁護士会が実施した民法(債権法)改正に関する研修会に参加してきました。

ニュースなどでご存知の方も多いと思いますが,2017年6月に民法(債権法)改正法案が国会で可決され,2020年4月1日から施行されることになっています。

今回の民法改正は,約120年前に現行ルールが定められてから最大の改正と言われています。今まで裁判例が積み重ねてきた法解釈を条文上明確にしたものや,今までのルールに大きな変更が発生するものなど,改正箇所は多岐にわたっています。

今回の研修会では,講師を法務省の立案担当者の方,つまり法律の設計者が務められました。そのため,配布資料も講義内容も大変わかりやすく,充実した時間を過ごすことができました(法務省HPでも解説資料が公開されていますhttp://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html)。特に,銀行実務や不動産実務に今後大きな変化があるのではないか,というのが私の印象です。

 

民法に限らず,日々新しい裁判例が生まれ,また新しい法律が施行されています。情報のアップデートに乗り遅れることがないよう,事務所全体で今後も研鑽を積んでいきたいと思います。

 

弁護士と季節感

2018-09-25

弁護士の北村です。9月も終わりになるとすっかり涼しくなりましたね。

 

さて,弁護士の仕事に季節感があるのかと言われると,それ程でもないかなというのが私の感想です。

当事務所の注力分野である交通事故と債務整理については,年間を通じてご相談件数が多いです。やはり茨城県土浦市周辺は車社会です。

また,決算時期に合わせて事業者の方のご相談が増える印象もあります。

 

相続や離婚などの家事事件については,盆正月明けや年度末にやや増える印象があります。

因みに,12月には交渉案件や裁判案件が終わることが多い気がします。できれば法的問題を新年に持ち越したくないですよね。

 

いろいろ雑感を書いてみましたが,髙田知己法律事務所ではいつでもご相談の予約をお待ちしております。まずはご連絡ください。

夏休みこども法律学校

2017-08-29

今年の夏も,8月2日にして,小学5,6年生を対象に,弁護士会主催のこども法律学校が実施されました

実際の裁判所で弁護士が刑事事件の模擬裁判を行い、子供たちには,裁判官の立場に立って,有罪か無罪か考えてもらいました。

今年の題材は,白雪姫で,白雪姫に毒リンゴを食べさせたのは,王様の妻なのか,白熱した議論が展開されました。

刑事手続きの流れや事実認定のやり方も学んでもらいましたが,今回の模擬裁判をきっかに,法律の世界に少しでも興味をもってもらえたらこれ幸いです。

 

今年の冬も,法律学校は実施予定ですので,ご参加ご検討下さい。

「弁護士への依頼について」

2017-05-16

弁護士の小沼です。

今回は,弁護士に相談や依頼をする手順についてご説明します。

 

1 弁護士へのアプローチ

日々の生活において法律トラブルが発生した場合には,弁護士に相談することが考えられます。弁護士へのアプローチ方法としては,①ホームページ等で法律事務所を探す,②弁護士会や市役所の法律相談を利用する,③法テラスで弁護士を紹介してもらう,などがあります。事前予約なしに訪れると,弁護士の都合がつかない場合がありますので,電話等で予め相談予約をすることが一般的です。

 

2 法律相談

法律事務所ごとに「相談料」の金額は異なります。当事務所の相談料は30分ごとに5000円(税込み5400円)となっておりますが,比較的多くの事務所で採用されている金額かと思われます。法テラスの制度を利用した無料相談等も実施しておりますので,お電話でご確認いただければ幸いです。法律相談のみで終了した場合,弁護士への依頼には至らず,費用も相談料のみとなります。

 

3 弁護士への依頼

法律相談を経たうえで,弁護士に依頼する場合,委任契約を締結することになります。弁護士に依頼する場合には,「着手金」「報酬金」「実費」がかかることが通常です(交通事故による損害賠償請求や過払金の回収等を依頼する場合には,「着手金」なしの「報酬金」のみという場合もあります。)。

「着手金」とは弁護士に依頼する場合にかかる費用のことで,依頼の成否にかかわらず発生します。「報酬金」は依頼が終了したときにかかる費用で,獲得した経済的利益に応じて発生します。「実費」は郵便切手代や印紙代などに使われた金額となります。

「着手金」「報酬金」「実費」等の弁護士費用については,契約前に説明がありますので,疑問を解消したうえで契約するようにしてください。

以 上

子ども法律学校

2017-02-07

弁護士の大和田です。

弁護士は通常の仕事のほかに,所属している委員会活動も行います。

私は法教育委員会に所属しており,小学生を対象に授業を行うこともあります。

県南地域では,夏と冬に「夏休み・冬休みこども法律学校」と銘打って,小学5,6年生を対象に,弁護士が授業を行います。

テーマは様々ですが,講義やグループディスカッションを行い,双方向の授業が展開されます。

昨年の冬休みこども法律学校は,12月26日に,イーアスつくばにおいて,選挙を題材にした授業を行いました。

多くの小学生に参加いただき,ありがたい限りです。

今年の夏も,子ども法律学校は実施される予定です。

毎年小学校にチラシを配布させていただきますので,お気軽に参加いただければと思います。

沖縄や北海道の裁判所で訴えらえたら ②

2016-10-25

弁護士の大和田です。

引き続き,遠方の裁判所で訴えられた場合の対応について書きたいと思います。

今回取り上げるのは,「電話会議システム」についてです。

 

前回は「移送」を取り上げましたが,重要な証人が原告と被告の両所在地にいる場合などは,移送が認められないこともあります。

その場合,弁護士に事件処理を依頼していれば,弁護士が遠方の裁判所まで行き,訴訟対応していくことになりますので,裁判の度に自ら出廷する必要はありません。

しかし,例えば遠方の裁判所までの交通費,宿泊費,日当などはいただくことになりますので,裁判の度に経済的な負担は大きくなります。

また,出廷に一日を要するような遠隔地の場合には,丸一日予定のない日でなければ裁判期日が入らないので,なかなか裁判日が決まらず訴訟が遅滞することもあります。

そのような場合には,電話会議システムを利用し,依頼者様の負担を軽減するとともに,訴訟を円滑に進めていくことが考えられます。

電話会議システムとは,裁判所が電話会議システムの利用を相当と認められば,当事者の一方は裁判所まで出廷することなく,電話で裁判手続きを行うことができるというものです。

このように,遠方の裁判所で訴えらえた場合には,移送の他にも対応する手段はありますので,お気軽にご相談いただければと思います。

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