Archive for the ‘相続に関する質問’ Category

相続第7回目ー法改正の話①ー

2019-02-12

弁護士の若林です

前回まで相続財産の範囲についてお話してきましたが、今回は少し違うお話を。

平成30年7月13日に相続に関する法律が改正、公布されました。
そのうち「遺言書の方式」に関する内容にも一部改正があったのですが、
今回「一部手書き以外の自筆証書遺言が認められることになった」ことを指摘したいと思います。

これまでの法律では、有効な自筆証書遺言を作るためには、遺言書を作成する人が、遺言書の全文、日付、氏名を自書し、印を押さなければなりませんでした。
一見簡単そうですが、相続財産をすべて手で書くことはとても大変です。
「大変なのは相続財産がたくさんある場合だけでしょ?」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。
相続人間で争いが起きないよう相続財産の分け方や方法を細かく指定したいこともありますよね。その場合も、すべて手で書かなければならないわけです。その上、間違えてしまった場合の修正方法も法律で厳格に決まっています。
(それでも大変さがぴんと来ない・・・という方は、ぜひ一度自筆証書遺言書を作成してみてください。)

それが新法では、相続財産の目録は自書でなくてもよいことになりました。
つまり、財産目録の部分については、パソコンで作成してもいいし、通帳や登記簿謄本のコピーを添付して財産目録としてもいいわけです。(ただし、各ページに遺言者の署名と押印は必要です。)

ちなみに、遺言書の方式に関する改正はについては、平成31年1月13日から施行されています。

相続第6回目「相続財産の内容―その3ー」

2018-11-02

弁護士の若林です。

 

久々の更新になりましたが、今回は相続財産のうち④不動産についてです。

 

相続財産に不動産が含まれることは多いですよね。

そして、その時一番問題になるのがその価格の評価方法です。

不動産の評価額としては、固定資産評価額、路線価、不動産業者による査定等色々ありますが、遺産分割の際にどれを採用するかについては定めがあるわけではありません。

相続人全員で合意しているのであれば、どの評価額を採用してもいいわけです。

 

さて、不動産を扱う場合、名義が被相続人の前の代のままになっていることもよくあるケースです。

この場合、前の代で遺産分割協議をしていなければ、前の代の相続人が法定相続分で共有している状況になります。

そのため、前の代からの相続手続きを経なければならなくなり、手続終了までに長時間かかってしまうことも多いです。

 

相続手続きをしていなくても納税はできますし、権利関係に争いがなければ実害が生じることもないため、ついつい登記手続きを後回しにしてしまう方も多いと思います。

でも、相続を重ねる度に手続きは煩雑になっていきますし、不動産を売却したいと思ったときにスムーズに動けず、活用の機会を逃してしまうこともあります。

ですので、早めの対応をおすすめ致します。

相続第5回目「相続財産の内容ーその2ー」

2018-04-09

弁護士の若林です。

 

今回は相続財産のうち、③自動車を取り上げます。

③ 自動車
亡くなった方が所有する自動車が対象となります。

自動車の所有は車検証で確認することができます。
自動車をローンで購入していた場合、車検証上の所有者欄が信販会社や販売会社の記載となっていることもあります。
車検証上の所有者が信販会社等になっている場合、ローンが残っていることが予想されますが、時々ローンは完済したけれど名義変更をしないままだった、ということもあります。ですので、まずはローンが残っているのかどうかを直接会社等に確認した方が良いでしょう。

自動車が相続財産になるとして、その価値はどうやって決めるのでしょう。
自動車の財産価値をいくらと評価するのかは、相続人間の協議で決めることになります。その際、業者による査定書やオートガイド自動車価格月報(通称:レッドブック)、インターネット上の同種車両の取引価格などを参考にすることが多いです。
もちろん、自動車は消耗品ですし、ある程度の年式や走行距離によっては、相続人間の話し合いで資産価値0円とすることもあります。

「相続人が行方不明!?」

2018-02-13

弁護士の大和田です

当事務所では,相続についてのご依頼も多数いただいており,あらたに相続特設ページを開設しました。そこで,今回のブログは,相続をテーマにしたいと思います。
相続にも様々なパターンがありますが,なかには,相続人が見つからず,遺産分割の話し合いすらできないということもあります,
例えば,兄弟姉妹と長年に渡り音信不通で,そのような状況の中,父(又は母)が亡くなってしまったというような場合です。
この場合,行方が分からない兄弟姉妹も父(又は母)の子供ですから,当然に相続人となりますが,連絡が取れない以上遺産分割の話し合いはスタートできません。
かといって,いつまでも放置するわけにもいきません。特に相続税が生じる場合には,相続税の申告期限がありますから,なおさら放置するわけにはいきません。
このような場合は,家庭裁判所に不在者財産管理人の選任の申立てをすることになります。簡単にいうと行方不明の相続人の財産を管理する人を裁判所に選任してもらうという手続きです。
不在者財産管理人が選任されれば,その管理人と遺産分割の協議を進めることが可能で,遺産分成立に向けて一歩前進することができます。
不在者財産管理人の申立ては,ご本人だけでももちろん可能ですが,必要な書類も多く,法的な知識も必要となる場合があります。ですので,不在者財産管理人の申立ての段階から弁護士に依頼することも十分検討された方がよいかと思います。
当事務所では,不在者財産管理人の申立てはもちろん,裁判所から不在者財産管理人として選任されることも多くあり,相続人が行方不明の場合の対応について知識や経験を積み重ねてきております。
相続人が行方不明で困ったということがあれば,是非当事務所までご相談下さい。

相続第4回「相続財産の内容ーその1」

2018-01-24

弁護士の若林です。

2018年がスタートしました!
ブログでは本年も引き続き磯野家をモデルに「相続」の話題を取り上げていきます。
本年もどうぞお付き合いくださいませ。

さてさて、相続第4回目からは具体的な相続財産の内容に入ります。
今回は、①現金と②預貯金を取り上げます。

①現金
例えば、被相続人のお財布の中に入っていたお金やタンス預金等、被相続人が亡くなった時に現金として手元に残っていたお金です。

②預貯金
各種金融機関に預けてある被相続人名義の預貯金で、被相続人が亡くなった時に存在しているものです。

ちなみに、預金と貯金の違いをご存知ですか?

どちらも「預けたお金」という意味なのですが、銀行や信金、労金等では「預金」、ゆうちょ銀行(郵便局)や農協、漁協等では「貯金」といっているようです。

 

話を元に戻します。

さきほど「被相続人名義の預貯金」といいましたが、名義は第三者だけど口座への入金等は被相続人が行っていた場合、いわゆる「名義預金」はどうなるのでしょう?
例えば、波平さんがサザエさんの将来を思い銀行でサザエさん名義の口座を開設し、そこにお金を積み立てていた場合、この預金は相続財産になるのでしょうか?

もちろん、相続財産と評価できるかどうかは、誰がお金を出しているのかや通帳の管理状況等様々な事情から実質的に被相続人の預金といえるかどうか判断することになるため一概にいうことはできませんが、お金を波平さんが積み立て、口座の管理も波平さんが行っていた場合には波平さんの相続財産として扱われる可能性が高いでしょう。

仮に、様々な事情から「サザエさんの預金である」と判断された場合でも、波平さんからサザエさんへの生前贈与として「特別受益」に当たるとされる可能性もあります。
(なお、「特別受益」については、後日詳しく説明をする予定です。)

 

ちなみに、この「名義預金」は相続税との関係でも注意を要します。ここでは詳しくは述べませんが、ぜひご留意ください。

相続第3回「相続財産となるものは?」

2017-11-01

弁護士の若林です。

少し間が空いてしまいましたが、
相続第3回目「相続財産となるものは?」です。
第2回で各相続人の相続分について説明しました。
法定相続分で分ける場合、妻である舟さんが2分の1、子どもであるサザエさん、カツオくん、ワカメちゃんがそれぞれ6分の1ずつ相続することになります。

相続分がわかったとして、その対象になるもの、つまり相続財産となるものにはどんなものがあるのでしょうか。

民法896条
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

すなわち、相続財産とは、被相続人が亡くなった時に存在するプラスの財産とマイナスの財産ということになります。ただし、財産の性質上被相続人のみが受け取ることができる権利は除きます。

では、プラスの財産としては具体的にどんなものがあるのでしょう。
よくあるものとして、
①現金 ②預貯金 ③自動車 ④不動産 ⑤有価証券
等が挙げられます。
この他、⑥被相続人がアパートやマンションを借りていた場合にはその賃借権も対象となりますし、⑦被相続人が訴訟中に亡くなった場合には原告・被告といった訴訟上の地位も原則として相続対象となります。

これに対し、⑧生命保険金については受取人が誰なのかによって相続財産となるかが変わります。同様に⑨死亡退職金の場合も支給規定によって左右されます。

なお、遺族年金は遺族の生活救済を目的とするものですから相続財産とはなりません。
香典についても、一般的には喪主に対する贈与とされていますので相続財産に含まれません。

次回以降、各財産についてもう少し詳しく説明していきたいと思います。

相続②「相続分はどのくらい?」

2017-06-16

弁護士の若林です。

 

相続2回目は「相続分はどのくらい?」です。

 

1回では磯野家を題材に「誰が相続人になるか」を説明しました。

波平さんの相続人は、舟さん、サザエさん、カツオくん、そしてワカメちゃんの4名でした。

 

では、各相続人の相続分はどのくらいになるのでしょう?

民法では相続人の順位に応じて相続分が定められています(法定相続分)。これを磯野家にあてはめてみましょう。

民法900

同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号に定めるところによる。

1号 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。

(中略)

4号 子、直系尊属、又は兄弟姉妹が数人ある時は、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、(略)。

 

条文に従うと、妻(配偶者)である舟さんの相続分は2分の1となります。

そして、子であるサザエさん、カツオくん、ワカメちゃんの3人は2分の1を平等に分けることになりますから、相続分は6分の1ずつとなります。

ちなみに、サザエさんが波平さんよりも先に亡くなっていた場合にはタラちゃんが相続人になります(代襲相続)。

この場合のタラちゃんの相続分は「サザエさんの相続分」、つまり6分の1です。

 

もっとも、相続人の全員で話し合い合意ができれば法定相続分と異なる相続分で分けることもできます。

例えば、舟さんが一人で相続財産の全部を相続することも、サザエさん、カツオくん、ワカメちゃんの合意があれば可能なわけです。

法定相続情報証明制度について

2017-06-06

弁護士の髙田知己です。

平成29年6月2日に参加した八翔会の勉強会で平成29年5月29日からスタートした法定相続情報証明制度についての案内がありました。

いままで相続に関する手続きをする場合、戸籍書類一式の束を銀行や登記所に使いまわして行わなければなりませんでした。しかし、この新しい制度を使うと、このような面倒が軽減されます。全国の登記所(法務局)において法定相続情報一覧図を作成し、これの写しの発行を受けることにより、この戸籍書類一式の束に変えることができるとのことです。この写しは必要な通数発行していただけ、しかもこの制度は無料とのことです。

裁判所での使用については、現在のところ正式な発表はないようですが、利用可能な方向での運用を期待したいところです。

相続①「相続人は誰?」

2017-04-07

弁護士の若林です

 

相続の第1回目は「相続人は誰?」です。

 

相続が発生したら亡くなった方が残してくれた財産をどのように受け継ぐかを相続人みんなで決めなければなりませんね。

そもそも、誰が相続人になるのでしょう。

 

誰が相続人になるのかは法律でちゃんと定められています。法律から該当する部分を抜粋すると次のとおりです。

 

民法8871項 

被相続人の子は、相続人となる。

民法8891項 

次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がいない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。

 1 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なるものの間ではその近い者を先にする。

 2 被相続人の兄弟姉妹

民法890条 

被相続人の配偶者は常に相続人となる。

 

文章だと今一つピンときませんね。

ここは国民的アイドル家族「サザエさん」でおなじみ「磯野家」に登場していただきましょう。

 

平成2941日、大変残念なことに磯野波平氏が亡くなりました。

民法の規定からすると、波平氏の相続人は、波平さんの「配偶者」である舟さん、波平さんの「子」であるサザエさん、カツオくん、ワカメちゃんの4名となります。

 

ところで、サザエさんは、磯野家に同居はしていますが、マスオさんと結婚してフグタ姓になっていますよね。

この場合も波平さんの相続人になるのでしょうか。

実際、相談者の方から「嫁に行った娘は相続人ではないですよね?」という質問を受けることがよくあります。

 

結婚して苗字が変わったとしても、サザエさんが波平さんの「子」であることには変わりありません。

ですので、「フグタ」姓になっていてもサザエさんも相続人となります。

 

磯野家では波平さんの「子」が健在なので、波平さんのご両親や兄弟姉妹が相続人となることはありません。

 

さて、波平さんよりも先にサザエさんがなくなっていたらどうなるのでしょう?

この場合も民法に規定があります。

民法8872項 

被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき(中略)は、その者の子がこれを代襲して相続人となる。

 

つまり、サザエさんが波平さんより先に亡くなっていた場合は、サザエさんの「子」であるタラちゃんが相続人となります。

 

ちなみに、マスオさんは婿養子ではないため相続人ではありませんが、仮にマスオさんが波平さんの養子になっていたとすると、法律上「子」という立場になりますので、マスオさんも相続人となります。

 

こんな証拠があるといい②相続編

2016-12-15

弁護士の北村です。年末も近づいてきて慌ただしい今日この頃です。

 

さて,シリーズ2回目は,相続についてです。

(1)相続人の範囲について

被相続人および相続人の範囲を確定しないことには,相続は始まりません。そのためには,被相続人の出生から死亡までの戸籍を追いかけていくことになります。本籍地が遠方にある人がいる場合,少しばかり面倒な作業かもしれません。

(2)遺産の範囲および評価について

被相続人の資産(=遺産の範囲)について,例えば被相続人と生前同居していた相続人とそうでない相続人とでは,大きな情報格差があることが多いです。あったはずの被相続人名義の通帳が見当たらない,などという場合には,戸籍謄本で相続関係を証明することで,各相続人が単独で金融機関の取引履歴や残高証明書を取得することができます。不動産については,地番が分かれば誰でも登記を取得することができますし,正確な地番が分からなくても,固定資産評価証明書などから,当該市町村内の不動産については把握ができます。

不動産や高価な動産等については,その評価額についてもめることも少なくありません。その場合,固定資産評価額を取るのか,路線価を取るのか,はたまた専門業者の査定額を取るのかについては,法律で決められているわけではありません。情報(資料)収集がカギといえるかもしれません。

なお,生命保険金については,受取人の固有財産であって遺産ではない(すなわち遺産分割の対象とはならない)と解されています。

(3)遺言の有効性について

遺言が存在する場合,その有効性が争いになることが少なくありません。民法が定める形式をみたすか否かはある程度明確であるため,深刻な争いになるのは,遺言作成当時の意思能力の有無や偽造の有無などです。

意思能力の有無(例えば認知症の程度など)については,最も重要な証拠は,医療機関等の診断書・診療録等です。日常接していた関係者の供述やメモなどももちろん重要ですが,そのまま信用性が認められるとは限らないことに注意が必要です。

偽造の有無については,比較可能な文書等があれば筆跡鑑定をすることも可能ですが,それなりの費用は覚悟しなければなりません。不自然な状況証拠によって偽造があったといえる場合もありうると思います。

(4)特別受益・寄与分について

法定相続分通りの遺産分割が相続人間の公平を害するといえる場合にこれを調整する制度が,特別受益および寄与分です。

具体的には,相続人の1人は十分に生前贈与をもらっているのでその分を差し引くべきだ(=特別受益),という主張をされることがとても多いです。また,被相続人の財産に使途不明金がある場合,生前同居していた相続人が手元に入れているはずだからこれを考慮すべきだ,という主張もとても多いです。

実のところ,相手がそんな事実はなかったと反論してきた場合,そのことを証明するのは意外と難しいのです。被相続人の通帳などから不自然な出金があり,同じタイミングで相続人の1人が突然多額の支出をしていたことや,相続人の通帳に不自然な入金があったことなどの証拠があれば,というところです。ただ,古い話だとそのような証拠がなくなってしまっている可能性もあります。使途不明金については,金額や時期に照らして,被相続人自身が使ったお金だ,という反論を封じられるか否か次第でしょうか。

因みに,使途不明金については,家庭裁判所の遺産分割調停ではなく地方裁判所の民事訴訟で別途決着を付けるよう,裁判所から求められることが多いです。

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